ラジオやテープを録音・再生する楽しみに加えて、ミキシング機能で「自分が音楽をつくる」楽しみ方を提案した名機がソニーのスタジオ・シリーズでした。その中で初代モデルとなるCF-1980は、ソニーらしい洗練されたデザインとマニアックな機能を持ち爆破的に売れ、後継機としてマークⅡとマークⅤが誕生した時も話題となりました。
1974年(昭和49年)に42,800円という価格のラジカセを購入するのは、当時、中学生だった自分には非常にハードルの高い事でした。少年漫画の裏ページ広告を見てから何度か両親にねだったが案の定軽く却下され、あきらめかけた頃の誕生日当日だったと思う、学校から帰宅して自分の部屋に入るとテーブルの上にマイクと一緒にCF-1980が鎮座していた。今でもあの時のドキドキした感情と部屋の様子は鮮明に記憶に残っています。落ち着いて母に尋ねると父親が何も言わずに買ってきたのだと教えてくれました。
母に促されて父にお礼を言った後、何となく気恥ずかしさを感じていたのか、箱から出して眺めただけで直ぐに遊びに出かけたのを覚えています。それからは毎日、このラジカセで色んな音楽をテープに録音して聴くのが日課となり、寝る時もベットの側に置いて「オールナイト・ニッポン」を朝までつけっぱなしで聴いていました。
大切にしていたラジカセも高校時代になるとレコードをステレオで聴くのがメインとなり、いつの間にか実家の屋根裏へと置き去りになってしまいました。
あれから40数年を経過したある日、存在を思い出して探してみると…
埃をかぶってはいましたが、当時のままの状態で残っていました。懐かしい
グレー基調の配色。各部の配置と大きさのバランスも素晴らしい、あらゆる角度から眺めても破綻がないですね。ダイヤルスケールの左にある黄色いボタンはライトスイッチになっていました。
本機最大の特長であるミキシング機能。音源はラジオ、テープ、外部マイクにライン入力も使えました。テープはセレクトスイッチにより、ノーマルに加えてクロームにも対応という優れものでした。
最近、コツコツとミュージックテープを収集しています。たまにラジカセで聴くと柔らかな音源でとてもノスタルジックな雰囲気に浸れます。デジタルには無い、ちょっと温かな感じが何とも言えません。
バリエーション拡大を積極的に行った「スタジオ」シリーズが、全機種の最高位に位置するトップエンドとして完成させました。スピーカーは16cmウーファーと5cmツイスターからなる2ウェイ仕様。口径をはっきり主張するパンチド・メタルの成型を使っています。この大口径スピーカーは従来のラジオカセットにありがちな音質の貧弱さを解消し、数多くのフォロワーを生み出しました。70万台を超える歴史的セールスを記録したことでも知られています。
ソニー スタジオ1980を使い始めて2年後くらいだったと思いますが、何気に立ち寄った電気店でパイオニアから発売されたばかりのラジカセ“RK-888”を見てそのあまりのデカさに驚いた記憶があります。
何よりもテープの操作部分がカセットデッキを思わせるレバー式という斬新なデザインを持っていて、ラジカセ専用に開発したという4.2cmトゥイーターと16cmウーハーの2スピーカーで、出力は3W。録音・再生ヘッドは硬質パーマロイで、クロームテープ使用時の周波数特性は50~12000Hz。さらにFMチューナーには3連バリコンを使用と、音質へのこだわりが随所に感じられました。
MW、FM。幅366×高さ240×奥行き110(単位・mm)。重さ4.6kg。
定価44,800円。
ラジカセ全盛期だった頃の懐かしい記憶です。