何となく物悲しい表情をして小首を傾けているフォックス・テリアの“ニッパー”と呼ばれている犬の置物iついての物語。
むかし、電気屋のステレオ売り場で陶器製の“ニッパー”をよく見かけた覚えがあります。そう言えば友人の家に入るとステレオのスピーカーの上にも置かれていたのを見た覚えがあります。
当時は陶器の犬?ていどにしか思っていなかったのですが、最近“ニッパー”のちょっと切ない由来を知り、何かしら感慨深いものがあったので記事にしました。
自分も柴犬(二代目)を飼っており、いつの時代でも愛情をもって育てた飼い主とその愛情に応えようとする忠実な愛犬との絆は強いものだと感じています。
どんな獰猛な野生動物も、愛情をもつ人間には心を許すように・・・
ビクターのマークにも描かれている“ニッパー”には、伝えられている物語があった。
イギリスの背景画家マーク・バラウドの元で育ったフォックス・テリアは、いつも訪れた人の脚を噛もうとしていたことから「Nipper(nip:噛む・挟む)」と名付けられました。
同じ画家でマークの弟のフランシスは、兄のマークが世を去ったため、兄の息子と一緒にニッパーを引取って大切に育てていたそうです。
自宅にあった蓄音器で、生前の兄マークの懐かしい声が吹き込まれていたものを聞かせたところ、ニッパーはラッパの前に座って最初はけげんそうに耳を傾けていたそうですが、しばらくすると聴き慣れていた主人の声に聞き入っているようだったと言います。そのニッパーの姿を見ていて心を動かされたフランシスは早速筆をとって一枚の絵を描き上げました。
その時の蓄音器は録音・再生ができるシリンダー式だったらしいですが、その後円盤式に画き変えられることに。そして、「His Master's Voice」とタイトルがつけられました。
亡き主人の声を懐かしそうに聞いているニッパーのけなげで可憐な姿は、円盤式蓄音器の発明者ベルリナーを感動させ、彼はこの名画をそのまま商標として1900年に登録しました。
それ以来この由緒あるマークはビクターの商品として美しく記され、最高の技術と品質の象徴として多くの人達から深く信頼され愛されているというお話しでした。なかなか素敵な実話ですね。